科学技術の発展、パンデミックの発生などが消費者のライフスタイルに影響を与え、消費者の価値観・行動が激しく変化しています。そのため、消費者向けビジネスで起業・会社設立して事業を成功させるのが難しくなってきました。
今回の記事では、その変化として注目されている「タイパ消費」「エシカル消費」「アクティブシニアの消費」などの消費者ニーズの傾向や特徴を取り上げ、それらに対応するための経営のポイントなどを解説します。
現代の消費者ニーズの特徴を知りたい方、これから消費者向けビジネスで独立を考えている方、BtoC(企業と消費者間の取引)事業での経営手法を学びたい方などは参考にしてくみてください。
1 消費者向けビジネスの概要とその現状
まず、消費者向けビジネスの事業の主な内容や、市場の状況などを説明しましょう。
1-1 BtoCとは
ここでは消費者向けビジネスを指す「BtoC(Business to Consumer)」について、その主な内容や特徴などを紹介します。
1)BtoCの概要
BtoCとは、企業と消費者の間の取引のことです。個人が食品や衣服等の商品をお店で買ったり、料理などを飲食店で食べたりしますが、そうした個人やお店(事業者)との取引がBtoCに該当します。なお、「C」は「Consumer」以外に「Customer」を指す場合もあります。
今までのBtoCは、消費者がお店へ足を運び商品を買う、サービスを利用する、飲食を楽しむ、という実店舗での購買行動が一般的でしたが、これらの行為はインターネット上でも実施されるようになりました。すなわち、ネット上のショップ等を利用する電子商取引(EC=Electronic Commerce)が普及しているのです。
従って、BtoCには、実店舗とECでのビジネスがあるわけですが、ECを利用する消費者が急増しており、これまで実店舗での商売に取り組んできた事業者はECへの対応が迫られています。
経済産業省が2022年(令和4年)8月12日に発表していうる「電子商取引に関する市場調査の結果」によると、令和3年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は20.7兆円でした。
下表は上記の調査で公表された同省の「BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)」を示す資料です。これを見ると、直近はコロナ禍の影響を受けているものの、国内EC市場は概ね順調に成長してきたことが理解できるでしょう。
スマホなどのモバイル端末や高速データ通信網等の普及のほか、新型コロナの感染防止策として外出自粛などが要請されたこともあり、消費者のEC利用が促進され、消費者全般に渡って、BtoCにおけるECの利用が増大したのです。
2)BtoCの種類
BtoCのビジネス領域や種類は広範囲に渡ります。先の経済産業省の調査内容では、BtoC-ECは大きく「物販系分野」「サービス系分野」「デジタル系分野」の3分野に分類されており、その構成内容は以下の通りです。
●物販系分野と対前年比(8.61%)および2021年EC化率(8.78%)
- 「食品、飲料、酒類」対前年比14.10%、EC化率3.77%
- 「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」4.66%、EC化率38.13%
- 「書籍、映像・音楽ソフト」7.88%、EC化率46.20%
- 「化粧品、医薬品」9.82%、EC化率7.52%
- 「生活雑貨、家具、インテリア」6.71%、EC化率28.25%
- 「衣類・服装雑貨等」9.35%、EC化率21.15%
- 「自動車、自動二輪、パーツ等」8.33%、EC化率3.86%
- 「その他」8.42%、EC化率1.96%
EC化率とは、ECの総額を全商取引の総額で割った値のことで、式で表すと「EC化率=ECの総額÷全商取引の総額×100%」になります。値が大きいほどEC取引が進んでいるため、その傾向を考慮したビジネス対応が必要です。
●サービス系分野と対前年比(1.29%)
- 「旅行サービス」▲9.62%
- 「飲食サービス」▲17.36%
- 「チケット販売」67.01%
- 「金融サービス」6.47%
- 「理美容サービス」▲4.33%
- 「フードデリバリーサービス」37.48%
- 「その他(医療、保険、住居関連、教育等)」6.00%
●デジタル系分野と対前年比(12.38%)
- 「電子出版(電子書籍・電子雑誌)」24.23%
- 「有料音楽配信」14.30%
- 「有料動画配信」18.47%
- 「オンラインゲーム」7.82%
- 「その他」6.00%
2021年のBtoC-ECにおいても、新型コロナの影響が色濃く出た結果となりました。消費者への外出抑制や事業者への営業自粛などの要請を受け、飲食サービス業や旅行サービス業などは大きなダメージを受けた一方、巣ごもり需要に伴う物販取引やフードデリバリーサービスは好調な結果となっています。
コロナ禍が収束していくと、こうした好不調の波が押し寄せた分野も元の状態へと調整していく可能性がありますが、EC化は今後も進むものと推察されます。一旦、ECの便利さを体験して利用に慣れれば、その便利さを簡単に捨てることは難しいでしょう。
3)BtoCの特徴
BtoCの代表的な業種は、物販系(流通・小売系)、サービス系(旅行・観光、宿泊、飲食、金融・保険等)、マスコミ系(新聞・出版など)、不動産・建設系(土地・建物の販売等)などになります。BtoCは個人を相手にすることから以下のような点が事業上の特徴になるでしょう。
- ・BtoB(事業者と事業者での取引)に比べて商品単価が低い
- ・特定の消費者と、不特定の消費者に対応する業種がある
- ・購買決定までの時間が短い、あるいは購買決定プロセスが比較的単純
- ・BtoBに比べ短期的な取引が多い
- ・テレビ・ラジオ・雑誌・新聞・チラシなどの媒体やインターネット上からの広告による販売促進が多い
- ・個人や消費者が相手であるため、ニーズの特定やその変化への対応が簡単でない
*インターネットの普及により個別対応の取組も増えている
なお、BtoB事業の特徴は以下の通りです。
- ・事業者が相手であるため、取引量や取引額が大きくなりやすい
- ・一度取引が成立すると長期取引になることが多い
- ・購買決定プロセスがやや複雑で、決定するまでの時間も長くなりやすい
- ・購買目的がその企業の事業目的等と整合するため、ニーズは比較的把握しやすい(収益向上、性能・品質の確保、安定供給 等)
- ・プロモーション活動は主に顧客と直接的に対面(あるいは電話)しての人的販売が多い
- ・生産財を扱う事業者の場合、自社の製品や製造等に関する技術的な知識のほか、販売相手の事業に関する知識など専門的な知識等が必要となるケースが多い
*ただし、オンラインによるPRなども進展しつつある
以上のようにBtoBとBtoCの事業では性質が大きく異なるケースもあるため、特にBtoB事業に従事していた者がBtoCで事業を始める場合にはその違いを認識して臨む必要があるでしょう。
1-2 BtoC市場の状況
ここではもう少し詳しく同分野の市場規模やその状況などを説明します。
1)BtoCの市場規模
2021年のBtoC-ECの市場規模は20.7兆円で、3分野の内訳は以下の通りです。
●物販系分野
BtoC-EC:13.2865兆円、同分野のBtoC市場全体:推定151.3兆円
⇒2021年のEC化率8.78%であることから、{8.78%=BtoC-EC取引額13.2865兆円÷市場全体の取引額×100%}と示せるため、2021年の同分野全体の取引額は約151.3兆円になります。
●サービス系分野
BtoC-EC:4.6424兆円
●デジタル系分野
BtoC-EC:2.7661兆円
⇒サービス系分野とデジタル系分野のEC化率が算定されていないため、各々の市場全体の取引額は不明ですが、仮にEC化率が10%同程度とすると、46.4兆円と27.7兆円と見込まれ、BtoC全体では225兆円程度と推察されます。
2)BtoC市場の状況
経済産業省の「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」では、国内BtoC-ECの市場概況として、以下の点が指摘されました。
- ・国内のBtoC-EC市場規模全体で初めて20兆円の大台に乗る
- ・物販系分野のBtoC-EC市場規模は前年比で8.61%の増加で、昨年の大幅な拡大に比べ緩やかな伸びに留まった
- ・2020年は新型コロナの対応で、外出自粛等に伴う「巣ごもり需要」が生じ、消費者の間でECの利用が急拡大した
- ・ECの利用が消費者の間で徐々に定着しつつあり、2021年は外出機会が回復しているものの、国内のBtoC-EC市場規模が前年比で増加となった
- ・2019年から2021年における物販系分野のBtoC-EC市場規模の年平均成長率は約15%。他方、国内の個人消費の物品購入は概ね横ばいで推移している(総務省統計局発表の家計調査等)ことから、物販系分野のBtoC-EC市場規模の成長率は十分に高い
- ・デジタル系分野のBtoC-EC市場規模は昨年と同様の伸びが見られ、2兆7,661億円と前年比で12.38%の拡大となる
- ・昨年、新型コロナの影響でマイナス成長となったサービス系分野のBtoC-EC市場規模は、4兆6,424億円と前年比1.29%の増加。旅行サービス、飲食サービスは不振だったが、チケット販売やフードデリバリーの市場規模は拡大
⇒直近のBtoC-EC市場は新型コロナの影響を受け、物販系とデジタル系は概ね好調でした。サービス系は旅行や飲食のサービスがまだ打撃を受けている一方、チケット販売やフードデリバリーでは回復および市場の拡大が見られています。なお、コロナ禍でEC利用が進んだことが明らかにされました。
2 消費者ニーズのタイプや動向
消費者向けビジネスで成功するには消費者ニーズの変化を捉え対応することが不可欠です。ここでは現在、注目しておかねばならない消費者ニーズの動向やタイプなどを説明しましょう。
2-1 消費者層の違いとその特徴
経済産業省の資料「新しい市場ニーズへの対応」から、年代による消費者層の区分とその特徴が確認できます。
1)各世代の消費行動
生まれ育った環境等により各世代でのものの考え方や価値観が育まれ、それが消費者行動の特徴になるケースは多いです。同資料から各世代での違いが確認できるため、ビジネスを設計する際の参考情報にするとよいでしょう。
ただし、そうした各世代の特徴も時代の流れの中で変化していくため、その点を随時確認していかねばなりません。
ベビーブーマー | X世代 1960-79 |
Y世代(ミレニアル) 1980-95 | Z世代 1996-2012 | |
---|---|---|---|---|
時代背景 | 第二次世界大戦後の復興期 | 高度成長と資本主義・能力主義の全盛期 | グローバル化と社会経済の安定期 | デジタル化、イノベーションと格差/分断の時代 |
考え方 | ・理想主義 ・集団主義 |
・個人主義 ・競争社会 ・楽観的 |
・懐疑的 ・ワークライフバランス ・ミニマリズム |
・複数のアイデンティティ ・多様な価値観 ・理想と現実のバランス |
消費行動 | ・消費はイデオロギー(消費者運動、不買運動など) ・三種の神器など、時代性を実感する消費 |
・消費は社会的地位 ・高級品やブランドなどステータスを表現する消費 |
・消費は、「モノ消費」より「コト消費」 ・学び、旅行等、豊かな人生につながる消費 |
・消費は個性の主張 ・倫理的 ・所有にこだわらない ・徹底的なリサーチ |
2)販売・購買方法の変化
以下のような点での変化が注目されます。
●消費チャネル
- ・繊維産業の分野を見ると、メインの衣料品の消費チャネルは、量販店(16.7%)、路面店(12.7%)、モール型ECサイト(11.2%)の順となっている
- ・上記を年代別に見ると、オンラインチャネルをメインとして利用している層は、若年層ほど利用頻度が高い
⇒ただし、モール型ECサイト、直営ECサイト、SNSの合計は17.0%となっており、現代ではオンラインの消費チャネルが最も多く利用されている点に注意が必要です。
⇒若い世代を中心にオンラインチャネルによる購買が進展しているため、BtoC事業ではオンライン対応が不可欠になってきており、その適切な手段を講じなければ成長は困難になるでしょう。
●オンライン販売の拡大
- ・オンライン販売が拡大しており、コロナ禍の2020年のEC市場規模は2.2兆円となった
- ・オンライン購入で消費者が不安に感じる点は、「サイズが自分の体型にフィットするか」、「生地の質感などが確かめられない」などが指摘されている
⇒オンライン販売の強化が必要される一方、その利用に関する消費者の不安や問題を把握し解消・軽減できる手段を講じることが重要です。例えば、オンライン販売の際に「サイズが自分の体型にフィットするか」という懸念を解消するための「スマートフォンを使った採寸サービス」が用意されています。
●DtoC(Direct to Consumer)の動向
- ・アパレルなどでは、オンライン販売、なかでも特にSNS等を通じて「小売店を経由しない直接生産者と顧客が取引」するDtoCのビジネスモデルが多く見られるようになった
⇒生産者は顧客と直接アクセスしてコミュニケーションをとるため、顧客情報の収集や効果的な訴求等が可能です。また、流通過程での中間マージンが生じないため、製造業者は消費者に「安くて良いもの」を提供でき、消費者は購入できるというメリットが生じるのです。
⇒ICTの発達と普及により、BtoCのタイプの1つであるDtoCというがモデルが登場してきました。また、同じような概念として、C2M(Customer to Manufactory:完全受注生産型ビジネス)もあります。C2Mは、消費者から直接注文を受けてメーカーが製品を提供する形態のことです。
顧客のサイズにフィットできるようにセミオーダー形式をとる衣料やアイテム、色・素材の組み合せをカスタマイズできる家具などがC2Mの形態として登場してきています。>
より個性を重視する消費者の増大に対応できるほか、大手製造業とのコスト競争を回避し在庫負担を小さくできるため、小規模製造業などにはC2Mは活用したいモデルの1つになるでしょう。
●サステナビリティを意識した購買行動
- ・社会の持続可能性を重視した購買行動、具体的には、環境や社会、労働者に配慮した商品を購入する動きが見られるようになってきた
- ・性年代別でみると、10・20代男性、10代女性ではサステナブル意識の高い
⇒「持続可能な社会」の実現の必要性が世界的に認識され、各国の政府や企業などではそのための取組を積極的に推進するようになりました。その結果、国民レベルで、その取組の重要性が認識されつつあります。
また、日本では「学習指導要領」の中で「持続可能な社会」の重要性が指摘されており、その中で教育されてきた若者の中に、サステナビリティを意識した購買行動が芽生えてきたのです。そのため企業は、このトレンドに対応するビジネスの展開が求められ始めています。
●健康意識の変化
- ・コロナ禍を経て国民の健康意識がより高まった
- ・コロナの影響もありwell-being(身体的・精神的・社会的に良好な状態)を求める傾向が強まり、繊維産業分野ではスマートテキスタイル、フェムケア・フェムテックなどが注目されている
⇒コロナ禍の中で、人々には身体的・精神的な健康のほか、社会的に健全な状態を目指す考えも高まり、それらに資する商品・サービスを求める傾向が強まってきています。
2-2 タイパ消費とZ世代のニーズ
Z世代とは1990年代後半~2000年代前半に生まれた比較的若い年齢層のことです。ここでは近い将来の消費を担う彼らに関連する消費者ニーズについて紹介しましょう。
1)タイパ消費とは
「タイパ消費」とは、「タイムパフォーマンス消費」という和製英語を簡略化した用語で、時間効率や時間対効果の高さを求める消費を指す言葉です。つまり、タイパ消費は消費行動において時間に対する満足度を重視する行動と言えるでしょう。
例えば、動画配信サービスなどにおいては、倍速再生機能や動画を短縮するアプリなどが時間対効果を高めるサービスとしてZ世代等が多く利用しています。
また、食品などでは一食で何十種類もの栄養素を摂取できるレトルト食品、書籍では1冊の本を10分程度で理解できるようにする要約サービスが登場してきました。
これまでの消費では、「費用対効果」の高さなどから購買決定されるケースが多かったですが、Z世代などでは費用以上に時間に対する価値の高さで決定する傾向が強まっているのです。
なお、このタイパの価値観について以下の2タイプがあることが、「ダイヤモンド・オンライン」の「Z世代はなぜ時間があるのに時短を求める?『タイパ消費』の実態」の記事から確認できます。
タイパを重視する人には、「時間が惜しい」という共通した感覚があるものの、『時間がないから時間を大切にしたい人』と『待ちたくない、今すぐ楽しみたい人』の2タイプに分けられる、とのことです。
前者は『時短型』、後者は『バラエティ型』とされ、この区別を認識していないと、タイパの本質を見失う可能性があると、青山学院大学経営学部マーケティング学科の久保田進彦教授が指摘しています。
『時短型』は多忙で、時間に追われている人々が当てはまり、子育て世代や、働き盛りの世代に多く、必要に迫られて時間効率を高める傾向があるのです。従って、「時短型は中高年層にも多く、Z世代特有とはいえない」と指摘されています。
『バラエティ型』は、一定の時間内でより多くのモノを消費したい、楽しみたいというタイプです。例えば、映画・動画等を倍速などで視聴する、音楽はサビだけ聞く、等のやり方で時間対効果を高めるタイプが該当します。
従って、彼らは時間に追われるから効率性を高めるというタイプではなく、自分の時間を目一杯楽しめるように振る舞う、という点に特徴があるのです。このタイプは学生やZ世代に多いですが、中高年層にも見られます。
従って、この「今」をできるだけ楽しめるように努める消費傾向は、時間に追われる『時短型』と明確に異なります。このように「タイパ消費といっても一律同じではない」ということを理解して、各々のタイパ消費のニーズを有する(Z世代を含む)ターゲットを特定しビジネスを設計しなければなりません。
2)Z世代の消費者ニーズ
Z世代は、スマホなどで情報のやり取りだけでなく買物、ゲームや動画視聴などを当たり前に行う消費者です。ここでは彼らの消費者ニーズや購買行動の特徴などをまとめておきましょう(タイパを除く)。
なお、以下に挙げる特徴は調査の仕方などにより異なってくるため、彼らをターゲットする場合は自社による独自調査は必要です。
●全般的な特徴
- ・他者の意見、多様性を尊重する傾向がある
- ・平等意識が高く、ジェンダーレス文化への理解が比較的高い
- ・社会貢献や社会問題への関心を持つ者が少なくない
- ・自分らしさや個性を重視する
- ・自分や他人の「好き」(「推し」)を重視する(好みの商品・サービス、ゲームやSNS 等)
- ・自分の意見を重視し、発信する意欲もある
- ・自分らしい時間の過ごし方をする(友人や仲間と一緒に過ごす 等)
●購買行動の特徴
- ・見かけよりも中身重視
- ・新商品にはそれほど興味は強くない(製品の購入に関する消費者の区分で見ると、Z世代には初期採択者が一定数いるものの、追随者層が少なく、採用遅滞者層が多い、とする特徴が見られる)
- ・買物場所や店舗は決まっている
- ・1カ所での購買を好み、複数個所での買物は好まない
- ・買物で失敗したくない(購買に関する他者のアドバイスを重視する)
⇒新製品等がある程度普及してから買い始める人が比較的多い、という可能性があります。
こうしたZ世代の特徴のほか、他の特徴がターゲットにあるか、を確認することが重要です。
例えば、環境に優しい製品や生産方法を重視する傾向があるZ世代の方でも、それが自分の個性に合わないデザインや機能を有する製品等なら購入される可能性は低くなるため、そうした点を確認しなければなりません。
2-3 アクティブシニアの価値観やニーズ
シニア層の中に「アクティブシニア」と言われる層が存在し、その消費動向がビジネスの対象として注目されています。アクティブシニアの明確な定義はないですが、一般的には「自身のこだわりや価値観を持ち、仕事や趣味に意欲的に取り組む元気なシニア世代」と見なされています。
彼らの年齢としては概ね60歳代~70歳代です。これまでの高齢者では、定年退職後は温泉や旅行などへ行ったりして、余生をゆったりと過ごすといったタイプが多く見られましたが、高度経済成長期を青春時代に駆け抜けてきた方々には以前の高齢者のあり様が当てはまらなくなってきたのです。
アクティブシニアは健康増進や運動に熱心なほか、定年退職後の仕事、消費行動や旅行等も積極的で、スマホなどの情報端末等を利用して情報収集しインターネット通販なども気軽に楽しんでいます。
退職金等の蓄えがあるなど金銭的に余裕のある彼らが、消費活動を積極的に行えば企業側としては、彼らは重要なターゲットになるはずです。
また、彼らは労働者としての価値も高く、貴重な労働力になり得るため、企業にとっては戦力にしていく取組も必要になってくるでしょう。なお、アクティブシニアが有する価値観や興味としては、以下のような点が挙げられます。
- ・65歳を超えても働きたい(まだ現役として仕事に従事したい、老け込みたくない、年金・貯金等に頼った生活をしたくない、等)
- ・旅行、買物や趣味などにはある程度のお金を支出しても楽しみたい(高額でも品質の良いものを買いたい 等)
- ・コロナ禍でより健康に注意した行動をとる(手洗い・マスク着用・うがいの実施、遠方の家族等にはオンラインで連絡、オンラインイベントへの参考 等)
- ・スマホ決済やQR決済の利用の増加などICTの活用が進む(モバイル端末等を使用して暮らしを快適・便利に過ごしたい、インターネットでの買物・オークションなどを楽しみたい 等)
- ・仕事や趣味にも意欲的である(誰かの役に立つとともに収入も得たい、生涯現役でありたい、という人や、楽器・絵画・手芸・英語(外国語)・スポーツなどを楽しみたいという人が多い)
以上のようなアクティブシニアの特徴を実際に確認してビジネスに取込んでいくことが企業に求められます。
2-4 エシカル消費
「エシカル消費」の「エシカル」とは、「倫理的・道徳的」という意味です。従って、エシカル消費は「道徳的に適切な消費行動」のことであり、消費者庁ではエシカル消費とは、「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」と説明しています。
現在、世界は温暖化に伴う自然災害の増大、産業等の発展に伴う自然破壊の進展、過度なグローバル化による貧困問題、など多くの社会問題を抱えており、その解決に迫られています。
こうした状況において、2015年9月に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、各国の政府や企業等はその達成に向けた取組を始めました。そのSDGsの17のゴールのうち、エシカル消費は「ゴール12(つくる責任、つかう責任」に関連する取組と考えられているのです。
企業等は社会への負荷の小さいモノづくりに努めるとともに、消費者は社会・環境に優しい商品等を購入する、といった取組が全世界的に求められるようになっています。
商品・サービスを買う、利用する場合の決定要因は、価格、性能・品質、デザイン・重量、納期やアフターサービスなど様々ですが、これらに加えて「エシカル」な点が重視され消費者の購買行動に大きく影響するケースが増えてきたのです。
もちろん他の要因に比べると全消費者の中で支持される割合はまだ小さいですが、SDGs活動の認識が広まりつつある中で、エシカル消費への支持が強まる可能性は低くないでしょう。
エシカル消費の具体的な例としては以下のような商品・サービスの購入・利用が挙げられます。
- ・フェアトレードが認証された商品
- ・売上金の一部が寄付に結び付いている商品
- ・障がい者支援につながる商品
- ・地産地消に資する商品
- ・被災地の商品
- ・エコナ商品、エコナ消費行動
⇒これは、発展途上国やその国民などが不利な条件で原材料・商品や労働力を提供するように強いられる取引ではなく、適正な条件や価格で取引するという「フェアトレード」が実施されている商品等の購入を意味します。
⇒これは、企業が提供する商品・サービスの収益の一部が、社会課題の解決に資する活動等へ寄付される仕組みにある商品等の購入のことです。
⇒これは、弱い立場にある者に対して、その自立を支援することに繋がる商品等の購入のことで、具体的には、障がい者が生産に携わる商品(小物やお菓子等)の購入が該当します。
⇒これは、地域活性化等の支援に貢献する商品等の購入のことで、具体的には、地方で生産される、伝統工芸品、農作物や魚介類の購入などです。
⇒これは、自然災害に遭った被災地の復興を進めるため、その地域の産業の復活を促すための、被災地の商品等の購入を意味します。
⇒具体的には、環境負荷の小さい商品の購入、レジ袋からマイバッグへの変更、マイボトルの利用、消費期限の近い商品の購入、省エネ家電等への変更、必要な分だけの購入、などです。
2-5 シェアリングエコノミーとサブスク
日本国内では経済のサービス化が進展して、消費に関する価値観が、モノの「所有」から「利用」へとシフトしつつあります。その「利用」のあり方として、「シェアリングエコノミー」や「サブスクリプション」が注目されており、ここでは両者の内容や背後のニーズを説明しましょう。
1)シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーとは、個人や企業などが所有している活用可能な資産(建物・車等の有形のほか、スキルや時間等の無形のものを含む)を、貸し借りするサービスの総称です。
現代ではインターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等が利用するケースをシェアリングエコノミーと呼ぶことが多くなっています。
具体的には、宿泊施設や駐車場、会議室などの「空間のシェア」、未利用・不要となったものを貸借・販売する「モノのシェア」、家事・育児・介護のなどの「ケアのシェア」、プログラミング・翻訳・教育などの「スキルのシェア」、自動車や自転車のシェアなどの「移動のシェア」、クラウドファンディングなどの「お金のシェア」などです。
株式会社情報通信総合研究所の調査によると、2021年度のシェアリングエコノミーの市場規模は2兆4,198億円と推計されています。また、2030年度の予測では、同市場はコロナ禍にある現状のペースで推移した場合は7兆6,455億円、新型コロナの不安や認知度の低さ等の課題が解決した場合には14兆2,799億円に拡大するとのことです。
なお、2021年の同市場の内訳は、「空間」分野が3,564億円、「モノ」分野が11,882億円、「スキル(「ケア」含む)」分野が2,579億円、「移動」分野が2,431億円、「お金」分野が3,741億円となっています。
また、課題解決後の2030年度の予測の内訳は以下の通りです。
- 「空間」分野:44,221億円
- 「モノ」分野:33,444億円
- 「スキル(「ケア」含む)」分野:26,637億円
- 「移動」分野:19,102億円
- 「お金」分野:19,395億円
以上のように各分野での大きな伸びが見込まれていますが、「空間」分野が「モノ」分野に変わり最大シェアとなっており、今後の拡大が期待されています。
2)サブスクリプション(以下「サブスク」に省略)
サブスクとは、利用者にとっては一定期間の利用に関して定額料金で商品やサービスの提供が受けられる取引を指します。具体的には、古くからの新聞や雑誌等の定期購読などです。最近では家電や自動車などの耐久消費財から動画配信サービスなど、様々なものサブスクとして提供されるようになりました。
これまでのサブスクは「定額で定量」というケースが一般的でしたが、インターネット経由のサブスクでは「定額で使い放題」や「定額で選び放題」など、コストパフォーマンスの高いサービス等が登場し利用が拡大しています。
株式会社矢野経済研究所が2022年06月08に同社サイトで公表した「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)」によると、「2021年度のサブスクリプションサービス国内市場規模(6市場計)は前年度比10.6%増の9,615億5,000万円」とのことです。
その市場概況として、以下の点が指摘されています。
- ・2021年度の9,615億5,000万円の内訳は、前年度と比較して成長した市場は「衣料品・ファッションレンタル」「外食サービス」「生活関連サービス」「多拠点居住サービス」「デジタルコンテンツ」「定期宅配サービス(食品・化粧品類)」の6市場全てである
- ・但し、2020年のコロナ禍の影響からの回復により前年度対比で成長している市場もある
また、将来展望については以下点が指摘されました。
- ・2022年度のサブスクリプションサービス国内市場規模(6市場計)は前年度比9.5%増の1兆524億7,500万円、2024年度には1兆2,422億4,000万円になると予測
- ・2022年度も上記の6つの市場全てで成長を予測
以上の通り同研究所では、サブスク市場は順調に成長するものと見込んでいます。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング社が2019年12月9日に公表している「サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果」によると、「利用しているサブスクリプション・サービスの種類」として以下の結果が示されています。
n数520(複数回答)
- 動画定額配信サービス 79.2%
- 音楽定額配信サービス 44.8%
- 電子書籍・雑誌・コミック定額配信サービス 28.3%
- ソフトウェア定額利用サービス 15.4%
- ゲーム定額配信サービス 11.2%
- ファッション定額利用サービス 3.1%
- 飲食定額利用サービス 2.7%
- 生活系サービス定額利用サービス 2.5%
- 家具・インテリア定額利用サービス 1.9%
- 子ども向け定額利用サービス 1.9%
- 自動車定額利用サービス 1.7%
- ライブ定額利用サービス 1.3%
- 家電定額利用サービス 1.3%
- 飛行機定額利用サービス 1.3%
- 住宅定額利用サービス 0.8%
以上のとおりインターネット経由のサービスの提供が大多数を占めており、耐久消費財などのモノの提供は極少数の利用に留まっている状況です。
3)シェアリングエコノミーとサブスクの違い
シェアリングエコノミーやサブスクの事業を行うにあたっては、両者の違いを含めた特徴を把握しておくことが重要です。
両者の共通する特徴は、提供する商品・サービスの利用に対して対価を顧客から受ける点です。しかし、そこで大きく異なる点は、利用における継続性や定期性が挙げられます。サブスクは月単位といった期間に一定量のサービスを継続して利用できるモデルです。
他方、シェアリングエコノミーは、一時的な利用や都度の利用などを前提としたモデルと言えるでしょう。従って、事業者にとってのサブスクは契約を取れればその契約期間での収益が見込めるモデルとなる一方、シェアリングエコノミーは都度の契約モデルであるため、利用が終われば次の収益に繋がるとは限りません。
企業としてはシェアリングエコノミーとサブスクの各々の特徴や違いなどを十分に考慮したサービスや、両者を上手く組み合わせたサービスなどの検討が必要になるでしょう。
3 消費者向けビジネスの重要ポイント
これまでの消費者ニーズの動向などを踏まえ、BtoC事業を成功させるための重要ポイントを説明します。
3-1 タイパ消費への対応
タイパ消費に対応するビジネスを展開する場合、以下の点に着目・注力して事業を進めることが重要です。
1)『時短型』への対応
多忙で時間に追われるような時間型をターゲットとする場合、単に「Z世代のような若い層」を対象とするのではなく、「実際に時短型を求める」子育て世代などに照準を定めることが必要になります。
時短型のタイパ消費について、誰の、どのようなニーズついて、どのような商品・サービスでどんな方法で提供していくか、を明確にしてビジネスシステムを組み立てなければなりません。
例えば、夫婦共働きの子育世代を対象とする場合、子供の世話や家事の手伝いなどに関するニーズも多いため、家事代行、買物・調理支援といったサービスを事業とすることができます。
2)『バラエティ型』への対応
『バラエティ型』は効率よく時間を活用して楽しみたい、というタイプでZ世代等の若い層に多いですが、中高年齢層にも存在します。そのため、提供する商品・サービスの商品企画から販売促進等まで、その年齢層に合わせた設定が必要です。
ただし、どの層についても重要な点は、「時間をより効率的に使える」という点であるため、書籍や映画・動画等を短時間で・一定時間でより多く、読める・視聴できる、などの価値を提供できるサービス等の検討が必要になります。
3)効率的な時間活用の特性を既存ビジネスに活用
また、上記のような効率的な時間活用を直接的なニーズとして捉える以外に、その行動特性を自社の既存のサービス等に適用させることも重要です。例えば、自社が動画や音楽の配信サービスをしている場合、その提供の際に時短できる機能を付ける、といった取組が挙げられます。
高性能な商品の提供においては、複雑な機能をこと細かに説明するのではなく、早く簡単に一定の機能を操作できるように支援する機能(アプリ等の提供)をつけるといったサービスが有効です。
学習教材などにおいては、丁寧な解説とともに重要な箇所や基本となるポイントを効率的に理解できるサポート機能などが有効になるでしょう。
以上のようにタイパ消費と言っても様々なニーズや活用の仕方があるため、ターゲットが有する特徴に適応したビジネスを設計することが重要です。
3-2 アクティブシニアへの対応
アクティブシニアのニーズを捉えるためのポイントを紹介しましょう。
1)シニアを一律に同一視しない
シニア層は、「現役シニア(定年後も積極的に働くシニア)」「アクティブシニア」「ノンアクティブシニア(家などで穏やかに過ごすことの多いシニア)」「パッシブシニア(要介護状態のシニア)」などに分類されたりするように、決して同じような特徴を有する層ではありません。
従って、アクティブシニア層をターゲットとするなら、その特徴やニーズに適したビジネスのモデルやシステムの構築が必要となるはずです。
また、同じアクティブシニア層においても特徴は多様で範囲も広いため、どのニーズ、どの特徴を対象とするかを設定することが重要となります。それを適切に進めるには、対象とする層のペルソナ(顧客像)を設定しましょう。
ペルソナの設定については後述しますが、「居住」「生活」「趣味等」「情報収集」「問題や困りごと」などの点から対象とする人物像を設定することが重要です。
2)アクティブシニア向けビジネスの成功のコツ
以下のような点が重要と考えられます。
●ペルソナに合わせたマーケティング施策
具体的には以下のような点です。
- ・イベントの開催
- ・店づくり、棚づくりや商品の工夫
- ・アナログメディアとWEBからの広告宣伝
⇒朝のラジオ体操やウォーキングのイベントなどを開催し、ターゲットが集まり、交流できるような機会を設けるケースが多く見られます。
⇒仕事や趣味などで忙しいシニア世帯向けの食材、総菜の充実のほか、食料品等の少量パック化、健康増進に役立つ調理提案や食品の推奨、などの工夫も多いです。店舗レイアウトではシニアに優しい通路幅や棚の高さなどの配慮が見られます。
孫と遊ぶ、自身で楽しむためのゲーム等の販売・配信などでは、ゲーム等の遊び方に関するわかりやすい説明をする、モバイル端末やそのインターネット利用に関する簡潔かつ丁寧に支援する、といったサービスも多いです。
⇒従来のチラシや地域新聞(タウン誌等)などによる広告のほか、WEBサイトやSNSを利用した広告宣伝に注力するケースが多く見られます。アナログメディアからWEBへ誘導する取組も重要です。
また、広告等では、文字の大きさ、見やすさ、わかりやすさ、に加えて、ターゲットの興味をそそるインパクトのある言葉や画像等を使用することが求められます。例えば、「60代女性の化粧(肌の手入れ等)の問題を解決する」ためのキャッチコピーの設定などが有効です。
3-3 エシカル消費への対応
エシカル消費に関するニーズは様々に存在しますが、ここではどのようなニーズにどう対応できるかの例を示しましょう。
●食品を無駄にしない
食品ロスの多さが社会問題としてクローズアップされており、事業者だけでなく消費者においもて食品ロスを少なくする、防止するための取組を重視しており、以下のような取組が期待されます。
- ・少量パックによる販売
- ・食材を使い切るため人数に合わせ分量販売、レシピの添付
- ・AIやデジタル技術を活用した在庫管理や発注管理のシステムの提供や支援
- ・廃棄される前の食品を消費者に提供し、食品ロスを減らすという「フードシェアリング」の実施
- ・見かけ、形の悪い野菜等の割安な販売
●環境に優しい製品等を利用したい
この対応では、自然環境を破壊しない、負荷の小さい方法や材料などで作った製品等を提供することが重要です。
- ・石油由来の材料ではなく自然素材などを使った製品の提供
- ・CO2の排出が少なく、使用エネルギーの少ない方法による生産の実施
- ・健康によく、環境に負荷をかけない無農薬栽培の実施
●フェアトレード商品を選びたい
貧困に苦しむ国や地域の人々を支援する目的で、その資源や労力等を適切な値段で購入・利用する「フェアトレード」の実践が求められています。
- ・産業の発展が遅れている地域などへのサプライチェーン網の構築
- ・生産拠点等を構えて産業の育成・指導とともに、生産物を適正価格で購入
- ・児童労働や過酷な労働環境等のない適正な労働条件による雇用の推進
ほかにも「リサイクル」「地産地消」「応援消費」などを切り口にしたビジネスの展開も有効です。
なお、エシカル消費への対応では、これに取り組むという理念を企業は社内外に示すことが重要です。そのため経営理念の中に「エシカル消費」に関する部分を含め、自社サイトでその取組をアピールすることなどが求められます。
また、エシカル消費への対応を具体的に示すために、関連する認証等を取得することも重要です。エコマーク、有機JASマーク、国際フェアトレード認証ラベル、FSC®認証、MSC認証(海のエコラベル)などがあり、可能なものは取得しましょう。
3-4 シェアリングエコノミーとサブスクへの対応
シェアリングエコノミーとサブスクに関するニーズへの対応について説明します。
1)シェアリングエコノミー
先に紹介した株式会社情報通信総合研究所の調査によると、同市場のカテゴリーは以下の通りです。
分類 | カテゴリー | サービス例(事業者名等) |
---|---|---|
スペース | 民泊(部屋) | Airbnb、STAY JAPAN |
駐車場、会議室、イベントスペース等 | akippa、軒先ビジネス、スペースマーケット、Spacee | |
モノ | 売買(フリマアプリ等) | メルカリ、minne、ラクマ |
レンタル(高級バッグ、洋服等) | ラクサス、モノシェア、airCloset | |
移動 | カーシェア | Anyca、dカーシェア |
サイクルシェア | ドコモ・バイクシェア バイクシェアサービス | |
料理の運搬、買い物代行等 | Uber Eats、ツイディ | |
スキル | 対面型(家事、育児等) | AsMama「子育てシェア」、aini、タスカジ |
非対面型(記事執筆、データ入力等) | ランサーズ、ココナラ、クラウドワークス | |
お金 | 購入型(必要金額が集まった場合に商品開発・イベント等を実施) | Makuake、CAMPFIRE、 READYFOR |
寄付、貸付、株式購入等 | LIFULLソーシャルファンディング maneo、FUNDINNO |
シェアリングエコノミーのビジネスは比較的歴史の浅い分野であるため、どのようなビジネスが存在しているかを把握し、その上で自身や自社の知識・ノウハウや資源を活かせる分野を見い出していくことが重要です。
また、上記の調査では、「課題解決シナリオの考え方」として、「成長の課題が解決する状況」が示されています。そうした課題を把握し、解決方法を実施することが成功に繋がるはずです。
●資産・サービス提供側(事業者側)にとっての「成長の課題が解決する状況」の内容
- ・新型コロナウィルス感染の不安がなくなる
- ・ほとんどの人がシェアリングサービスのことを良く知っているようになる
- ・企業(または個人プロ)ではない個人が提供する資産やサービスを利用するのが当たり前になる
- ・自分が提供したい資産・サービスを提供できるようになる(新しいシェアリングサービスが普及する)
- ・トラブルが起こった場合の保証についての法制度が整備される、国や自治体が安全性を保証してくれる
⇒感染防止対策を徹底し、他者とシェアするモノやサービスの利用に関して不安を解消したり、軽減したりする取組(安全性の証明等)が求められます。
⇒ターゲット層の情報取集手段を把握し、それを通じて積極的に自社サービスをPRするなどの取組が必要です。
⇒業界全体や同業他社との協力などにより、シェアリングサービスのCMやイベント開催などを行い、シェアリングサービスを気軽に利用したくなるような雰囲気の醸成などが有効になるでしょう。
⇒シェアリングサービスの利用が進むように、新しいサービスが登場しやすくなるように業界等でプラットフォーム作りを推進するといった取組も必要です。
⇒トラブル対策等に関するルール作りを、行政を巻き込んで業界全体で取り組んでいくなどの取組が求められます。
2)サブスク
●今後期待できるサブスク事業の分野
今後の成長が期待されるサブスク分野を把握することが重要です。
先に紹介した三菱UFJリサーチ&コンサルティング社の「サブスクリプション・サービスの 利用状況に関するアンケート結果」では、「今後、利用してみたいと思うサブスクリプション・サービスの種類」として、以下のような項目が挙げられています。
- 動画定額配信サービス 76.3%
- 音楽定額配信サービス 50.0%
- 電子書籍・雑誌・コミック定額配信サービス 37.1%
- 飲食定額利用サービス 20.8%
- ソフトウェア定額利用サービス 16.5%
- ゲーム定額配信サービス 16.5%
- ファッション定額利用サービス 14.6%
- 自動車定額利用サービス 11.0%
- 生活系サービス定額利用サービス 10.6%
- ライブ定額利用サービス 8.5%
- 家電定額利用サービス 7.1%
- 住宅定額利用サービス 6.2%
- 子ども向け定額利用サービス 5.6%
- 家具・インテリア定額利用サービス 5.4%
- 飛行機定額利用サービス 5.4%
「調査時点」での利用の多かったインターネット経由関連のサービスは、「今後の利用」においても期待できる結果となりました。それら以外では「飲食定額利用サービス」「ソフトウェア定額利用サービス」「ファッション定額利用サービス」「自動車定額利用サービス」「生活系サービス定額利用サービス」などが増加しそうな結果になっています。
●サブスク事業での重要な課題
サブスク事業の場合、特に以下のような課題解決を進めることが重要です。
- ・サブスクサービスの認知度の向上と魅力の訴求
- ・サブスクに合ったシステムの構築
- ・サービス等の継続に繋がる顧客関係
⇒サブスクサービス全般の世間的な認知度がまだ高くない状況にあるため、自社サービスの認知度が低い場合はその改善が優先されます。ターゲットが情報収集に利用するメディアやSNSなどに広告を打つといった取組が必要です。
PRする場合には、そのサブスクサービスがターゲットにどのようなメリット(便利さ、コスパやタイパ等)や楽しさなどを提供できるかを訴求しましょう。
⇒従来の売り切りタイプのサービスと定期利用を前提としたサービスとでは契約、請求や顧客管理などの業務システムが異なるため、サブスク事業に合ったシステムを構築する必要があります。
サブスクは自社の所有資産を一定期間貸し出す事業であるため、売り切り型ビジネスに比べ管理が複雑化しやすいことから適切な管理システムが必要であり、そのためのコスト負担には注意が必要です。
⇒サブスク事業では、より長期の利用更新が収益の増大に繋がるため、顧客との関係の構築と維持が重要になります。
契約までのアプローチも重要ですが、サブスクでは利用中・利用後の対応がより重要となるため、自社から利用者へ積極的にアプローチし、不満・不安の解消とともに新たなサービスの提案などを行い利用の更新に繋げる取組が必要です。
4 消費者向けビジネスの進め方のコツと注意点
起業時・会社設立時およびその後に消費者向けビジネスを始める、進めて行く場合の重要点と注意点を説明しましょう。なお、消費者向けビジネスは広範囲であるため、アクティブシニアを例として解説します。
4-1 対象とする層の設定
例えば、アクティブシニアのうち、どの層をターゲットとするかを決定することが必要です。具体的には、彼らのニーズや特徴と自社の経営資源等の強みを踏まえ、選定基準を設定の上ターゲット層を決定します。
アクティブシニアが興味を持つ対象は、趣味、旅行、運動・スポーツ、勉強・資格取得、労働・ビジネス、ボランティア活動、孫の世話、などですが、そうした分野でのニーズや行動の内容で検討することが重要です。
例えば、趣味の分野では、映画鑑賞、園芸・庭いじり・ガーデニング、読書、美術鑑賞、遊園地・動植物園・水族館めぐり、カラオケ、音楽鑑賞、演劇鑑賞、などに人気があり、それらの中から候補を選び強みを活かせる事業内容を検討していきます。
自社の強みとターゲットのニーズの関係から、彼らが好む映画、美術、音楽や演劇等を鑑賞できるプログラムを作って提供する、園芸・庭いじり・ガーデニングを気軽に学べる講座の提供や必要な材料・道具を販売する、というビジネスなどが考えられるでしょう。
このように対象とする層のニーズや行動特性にあわせて事業内容を検討します。
4-2 ペルソナ設定に基づく商品・サービスの検討
ターゲットのニーズを捉え消費者向けビジネスで成功するためには、ペルソナ(商品やサービスで設定する顧客像)の設定が有効です。
ペルソナの設定では、年齢、性別、居住地、家族構成、職業、収入、趣味、ライフスタイル、価値観、など対象者となる者の様々な情報が集められ、各項目で共通するような内容をもとに、具体的なターゲット像が設定されます。
例えば、旅行に関するサービスでペルソナを設定していく場合、以下のような情報から設定されるのです。
- 年齢:65歳~
- 性別:男女
- 仕事:有り
- 年収:年金を含め○○万円以上
- 趣味:旅行、スポーツ、アウトドア等
- 住居:関東エリア
- 同居家族:夫婦世帯、単身世帯
- スマホ・PCの利用:スマホの利用は多い
- SNSの利用:毎日利用
- 悩み事:運動不足、老化の進行
- 休日の過ごし方:夫婦や友人と運動
- 旅行の回数:数年に1回以上
事業者は、こうした基本情報から彼らのニーズをさらに調査し、具体的なマーケティング施策の内容を検討していきます。
例えば、「温泉地を巡りながら観光名所等を散策したい」というニーズに対して、ペルソナの設定情報を根拠に「東北3大温泉をじっくり堪能し、青森ねぶた祭や大曲の花火を見学できるアクティブな旅行」といったサービス内容が設計されるのです。
もちろん広告などのプロモーション活動もペルソナ情報に従って展開していきます。
4-3 ペルソナに合ったプロモーション活動
ターゲットに自社の商品・サービスを認知させ利用してもらうためのプロモーション活動が必要ですが、それにはペルソナに合った方法で実施しなければなりません。
例えば、その対象者の情報収集手段が何であるかを把握し、それを利用したアプローチや訴求が必要になります。4大メディアのほか、チラシ、WEBサイト、SNSが彼らの情報収集手段になり得ますが、そのうちどれが最も利用されているかを把握して活用することが重要です。
もちろん商品等やペルソナによっては人的販売による面談や電話などでのアプローチも必要になります。どの手段が最も有効であるかを掴み実施しましょう。
また、最近「リテールメディア」の活用が注目されるようになりました。これは、小売業が独自に収集・所有する顧客の購買データや行動データ等を活用して広告する手法のことです。
小売業での「顧客とのアクセスポイント」(店舗、スマホアプリ、ECサイト等)が広告に利用され、メディアとしての機能を果たしています。
具体的には、「ECサイト上の広告枠や検索キーワードに対応して広告配信する」タイプや「顧客IDに紐づけされた購買データ(POSデータ等)をもとに広告サービスを行う」タイプがあります。
消費者向けビジネスではこうした顧客の購買データや行動データに基づいた広告がより重要になってきました。
4-4 ターゲットに適した顧客対応
自社ビジネスのPR、契約、アフターサービスについては、ターゲットの特性を踏まえた対応が求められます。シニア層の場合、簡潔で丁寧な説明が重視されることが多いため、分かりやすい資料で一定時間かけた親切な説明が重要です。
ターゲットの中には「タイパ」を重視するケースもありますが、シニア層では多少時間がかかっても丁寧な説明が欲しい、という層が多いため、簡潔過ぎる説明やPRは注意しなければなりません。
逆にタイパを重視する層ではその逆になるため、対象者の特徴に合わせた顧客対応が必要です。
また、サービス等の利用中や利用後には、問題や心配事などがないかを確認して、不安等があれば解消してサービスを満足してもらえるように努めなければなりません。こうした対応により満足度を高め再度の利用へと繋げるようにしましょう。
5 まとめ
消費者向けビジネスは、事業者や行政を対象とするビジネスと異なる点も多く、ニーズのタイプも内容も多種多様です。その上、ニーズの変化が激しく、各時代や年代などより大きく異なるケースが少なくありません。
消費向けビジネスではそうした対象者のタイプ・特徴とともにニーズを把握して、適切な顧客像を設定の上、適切なマーケティング施策を実施する必要があります。今回の記事でご紹介したBtoCに関するニーズやその対応方法などを参考に同分野での会社設立などを検討してみてください。